人手不足のいま、介護離職を防ぐための有効な支援策は?

介護離職防止策

少子高齢化が急速に進む日本では、慢性的な人手不足が大きな社会問題となり、今後も人口減少の流れと同時に、就業人口も減っていくことが見込まれている状況です。そんな中、家族等の介護のために「介護離職」を選ぶ人が後を絶ちません。それによりさらに人材が流出し、人手不足が加速していくのです。介護離職した人の理由から、企業ができる支援策を考えてみましょう。

介護離職の理由1位は「勤務先の問題」

厚生労働省の委託により行われた調査(※)によると、介護のために離職した理由は以下の通りでした。

仕事を続けたい前提の中で、4割以上が離職理由を「勤務先の問題」と回答し、続いて「サービスの問題」「家族・親族の希望」と続きます。

さらに、「勤務先の問題」と回答した人は、辞める理由となった勤務先の課題として以下を挙げています(複数回答)。

■仕事を辞める理由となった勤務先の課題  (複数回答 n=410)

  • 介護休業制度等が整備されていなかった(63.7%)
  • 介護休業制度等の利用要件を満たしていなかった(29.8%)
  • 勤務先に介護休業制度等を利用しにくい雰囲気があった(35.4%)
  • 代替職員がおらず、介護休業制度等の利用ができなかった(23.3%)
  • 職場の労働時間が長い、深夜勤務・シフト勤務があるなど、労働時間に問題があった(18.5%)

介護には、体力だけでなく精神的にも大きな負担がかかります。仕事と介護を両立できるよう、企業は両支援制度の導入とともに、実際に使いやすい環境や体制を整備する取り組みが必要です。

※ 令和4年3月 厚生労働省委託調査「令和3年度仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業」より

2025年4月 育児・介護休業法改正について

介護離職の防止に向けた両立支援制度として、介護休業、介護休暇、短時間勤務、時間外労働の制限(残業免除の制度)などがあります。

これらの制度は「育児・介護休業法」で定められており、業種や会社の規模に関わらず、対象家族を介護する従業員(一定の条件あり)からの申し出により利用できるものです。

また、2025年に予定されている育児・介護休業法の改正は、これまでの施策をさらに強化し、働く人の仕事と育児・介護の両立を支援するべく、制度の改正や事業主への新たな義務が発生します。

<参考>2025年 育児・介護休業法改正のポイントと 企業がいますぐ準備すべきこと。

各企業で一歩進んだ支援策を

しかし、人手不足のいま、介護離職による人材流出を防ぐために、一歩進んだ支援策が必要です。介護する従業員に「柔軟な働き方・介護との向き合い方」をサポートする支援策について、企業の支援策を一例としてご紹介します。

・ストック休暇の導入

時効消滅した年次有給休暇の残日数を一定日数に達するまで積み立てておき、長期休暇が必要になった際に使用可能とする制度。家族の介護や病気の療養など、不測の事態に柔軟に対応できる休暇制度を用意しておくことで、セーフティーネットとなり、人材の流出防止にも効果を発揮するでしょう。

・介護休暇の有給化

介護休暇は原則的には無給で(企業の就業規定による)休んだ分は給料からマイナスになり、経済的負担も発生します。介護休暇の有給化で、年次有給休暇の消化を控え、安心して家族のケアに時間をあてることができます。

・介護離職からの再雇用制度

やむを得ず介護離職した後、ひと段落したら自社で再度働く場を提供する制度です。在職中に培ってきた経験や知識・技能を活かしてもらうことで、企業側も従業員側もメリットがある支援策といえるでしょう。

人材不足のいま、選ばれる企業とは

家族の介護や育児が必要かどうかに関係なく、すべての従業員が柔軟な働き方を選択でき、不測の事態なった時でも企業が対応策を用意してくれているということは、魅力ある職場として「人材の確保」ができ、「人材の定着・離職防止」が期待できます。人材不足のいま、長く安心して働ける職場だと従業員に認識してもらうことは、企業の存続のために不可欠と言えるでしょう。

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