介護と育児が重なる「ダブルケア」、 企業がとれる対策は?

仕事と介護と育児の3つの両立 介護離職防止策

「ダブルケア」という言葉をご存じでしょうか。介護と育児が同時期に発生する状態のことで、その背景には晩婚化により出産年齢が高齢化したことや、少子化で兄弟姉妹が少ない、親戚付き合いが希薄な核家族化などがあります。介護で離職する人が多い中、ダブルケアとなると離職する人はますます多くなると予想されます。ここでは、ダブルケアの現状と企業ができるサポートについて考えてみましょう。

ダブルケアの現状

平成28年の内閣府の発表によると、就業構造基本調査により推計されるダブルケアを行う者の人口は約25万人(女性約17万人、 男性約8万人)で、そのうち女性の約半数、男性の約9割が有業者となっています。また、ダブルケアを行う者のうち男性の約6割、女性の約7割が30~40歳代となっており、貴重な戦力であるこの世代が両立できずに離職してしまうと、企業にとっても大きな損失となります。

出典:平成28年4月  内閣府男女共同参画局 育児と介護のダブルケアの実態に関する調査」

介護と育児に疲れ果てた母親

まずは相談窓口の開設や情報提供を

介護と同様、ダブルケアの人には相談相手がいないことが多く、そのことが精神的負担となり、心身の健康に悪影響を及ぼしかねません。企業が施せるサポート体制として、まずは「働き方」の相談窓口を開設し、介護や育児に限定せず困りごとを気軽に相談できるような体制づくりが必要となります。そこでは社内の支援制度と同時に、行政の支援制度についての情報提供も行えるとさらにダブルケアで悩む方の負担軽減につながるでしょう。

また、定期的に従業員へ情報発信するなどして、相談しやすい環境を整えれば、今は介護や育児に従事していない従業員も将来的に安心して仕事に取り組めます。

 

柔軟な働き方ができる配慮を

テレワークやフレックスタイムなど働きやすさへの配慮は、ダブルケアで効率的に働きたい人に適した制度です。ダブルケアを担う人は、介護・育児の時間の確保や、デイケアサービス・保育所等への送迎の時間調整、さらには家事や自分のための時間も必要です。通勤時間が削減できれば、負担はその分抑えられ、疲労も軽減されます。仕事との両立を続けることを前向きに考えてもらうことができるでしょう。

無駄な通勤時間

「帰りにくい」「休みにくい」職場風土の改善を

たとえ支援制度が整っていても、「定時で帰れないことが当たり前」「休まないことが美徳」「昇進昇給には勤務時間が大きく影響する」、こんな職場環境でダブルケアや介護・育児で働き方を調整したい人は気兼ねなく制度を利用できるでしょうか?一緒に働く人の理解を得られない環境では、職場に居つづけることは難しいだけでなく、この先に介護や育児が想定される従業員は安心して働き続けることができなくなり、転職を視野に入れるかもしれません。そういった職場風土を改善することは、企業の存続・成長のためにも急務であるといえます。

残業が当たり前な職場

企業の存続・成長に人材は必要不可欠

日本の働き方や就労に関する状況は、他国と比較して労働時間が長く、労働生産性の低さが課題となっています。仕事と家庭の両立やプライベートの時間が必要なのは、ダブルケアや介護・育児に従事している人だけではなく、すべての働く人です。

企業の存続・成長にとって人材は必要不可欠なものです。業務の効率化による利益向上や、生活の質の向上など、企業と従業員双方にメリットのある働き方改革が、人を含めた企業全体の質の向上につながるのです。