介護休業・介護休暇制度は「育児・介護休業法」という法律に定められた制度ですが、介護離職者が離職前に介護休業・休暇を利用しなかった企業が5割超(54.5%)あることがアンケート結果としてわかりました。介護離職が深刻さを増すなか、各企業による支援制度の周知や取得の働きかけが遅れると、社会的にも大きな損失が広がることが懸念されます。
介護離職者の半数以上が利用しない介護休業・休暇
東京商工リサーチが国内企業約5000社に対して実施した「介護離職に関するアンケート」によると、介護休業(対象の家族1人につき通算93日)」と「介護休暇(年5日)」のいずれも利用していない介護離職者の割合は54.5%。半数以上が離職前に介護休業制度を利用しなかった、という結果になりました。
規模別でみると、「介護離職者の中に介護休業制度を利用した人はいない」とした大企業が36.8%に対し、中小企業では58.2%。人的余裕のない中小企業は大企業に比べて未取得率が高く、周囲に気遣いし介護休業・休暇取得に至らない状況や、そもそも制度の周知や利用の働きかけがされていないなど、制度が独り歩きしている印象です。
※ 2023年10月 東京商工リサーチによるインターネットアンケート調査。有効回答5,125社
※ 資本金1億円以上を大企業、1億円未満(個人企業等を含む)を中小企業と定義
企業により取り組みに差が出る結果に
仕事と介護の両立に向けた企業の取り組みについてのアンケート結果では、最多が「就業規則や介護休業、休暇利用をマニュアルなどで明文化」で50.2%(4,898社中、2,461社)。次いで「取り組みや整備した制度はない」が25.2%(1,237社)と、差が明確な結果となりました。規模別では「取り組みや整備した制度はない」大企業は8.1%(648社中、53社)に対し、中小企業は27.8%(4,250社中、1,184社)とこちらにも大きな開きが出ました。
両立支援が進まない理由は?
自社の両立支援が十分だと思うかについての回答は「そう思う」が18.4%(5,125社中、947社)と約2割、「そう思わない」が38.0%(1,951社)と約4割が不十分と回答しました。また、「わからない」は43.4%(2,227社)で、仕事と介護の両立支援を模索している企業が多いことがうかがえます。
では、その理由はなんでしょうか。「両立支援が十分と思わない」と回答した企業の理由は「代替要員を確保しにくい」が62.4%。休業期間の限定雇用や職場内での埋め合わせが難しい現実があります。次いで「自社に前例が少ない(51.96%)」「介護休業制度が社員に浸透していない(31.15%)」と制度はあったとしても周知がされていないなど、仕事と介護の両立支援が後回しになっている可能性もあります。
2030年には約318万人がビジネスケアラーに
団塊の世代すべてが75歳以上となり、超高齢化社会を迎える2025年。人手不足が深刻化する中で、働きながら介護をするビジネスケアラーの増加は大きな課題のひとつです。2030年には約318万人が仕事をしながら介護をし、その経済損失額は約9兆円に上ると予測されています(※)。従業員が仕事と介護に追われ、生産性の低下、さらには介護離職などにつながってしまわないよう、仕事と介護を両立できる体制を整備し、それを周知し続けることが重要です。
※ 2024年3月 経済産業省「仕事と介護の両立支援に関する経営者向けガイドライン」より