家族の介護を理由として退職する「介護離職」が増加しています。なかでも、従業員が辞めるまで介護に悩んでいたことに企業側が気づかなかった、というケースが多く、問題視されています。このように、職場に対して家族を介護していることを伝えず、悩みを抱え込んでしまう状態のことを「隠れ介護」といいます。
隠れ介護になってしまう原因や企業が取れる対策を考えてみましょう。
隠れ介護になってしまう原因は?
介護に直面する40代以上は、責任のある仕事を任されている世代でもあり、介護をしていることを職場に伝えにくい、という心理的な要因が大きな理由だと考えられます。具体的には、
・職場に迷惑をかけたくない
・仕事の引き継ぎが困難
・昇進や昇給に響くのではないか
・仕事やポストを奪われてしまうのではないか
といった不安から、介護の悩みを抱え込んで仕事を続けてしまうのではないです。
一方で、会社に介護と仕事の両立支援制度があることを知らず、会社に相談できなかったという人も多いようです。
周知されていたら介護離職は防げたかも?
介護を理由に退職した人へ行った厚生労働省の調査では、「どのような職場の取り組みがあれば仕事を続けられたと思うか」という設問に対し、半数以上の人が「仕事と介護の両立支援制度に関する個別の周知」と回答しています。
その他の回答項目を見ても、「両立支援制度に関する研修」や「事例の収集・提供」などが続き、企業側がもっと両立支援制度を周知していれば介護離職を防げたかもしれない、と推測される結果となっています。
出典:令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業(令和4年3月 厚生労働省委託調査)
介護する立場になる前の周知が必要!
上と同じ調査で「介護を始めてから仕事を辞めた時までの期間」の回答では、「半年未満」が半数以上を占めており、介護を始めて短い期間で退職を決めてしまう人が多い結果となりました。
この結果から、「介護が始まったらすぐ会社に相談してもらうために、日頃から従業員に対して両立支援制度を周知し続ける」ことが介護離職防止対策のひとつであることは間違いありません。
出典:令和3年度 仕事と介護の両立等に関する実態把握のための調査研究事業(令和4年3月 厚生労働省委託調査)
両立支援制度を周知するための手段とは?
従業員へ両立支援制度を周知するためには、以下のような手段が考えられます。
・相談窓口を開設し、社内掲示ポスターやイントラなどで告知する
・両立支援制度のパンフレットを作成し、配布する
・メルマガなどで介護や育児の両立支援を含めた「働き方」のニュースを配信する
・全社員を対象に国の介護支援制度や社内の両立支 援制度の研修会を開催する
・管理職を対象に、介護や育児との両立支援研修を開催する
従業員に対して「会社は介護と仕事の両立を支援しています」というメッセージを常に発信し続ける姿勢が、隠れ介護や介護離職の防止につながります。
今すぐ、できることからスタート!
団塊の世代が75歳以上の後期高齢者になり、超高齢化社会に突入する「2025年問題」はすぐそこまで迫っています。日本国内全体で労働人口が減少する中で、高齢の家族の介護をしながら仕事をしなければならない従業員が今より増加することは避けられないと言えるでしょう。
従業員が介護に直面しても働き続けられる環境を整え、隠れ介護をする必要がなくなる風通しの良い職場を目指して、できることから今すぐはじめませんか。